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2025.12.162011年3月の東日本大震災以降、全国の教育機関では防災・安全教育の重要性が高まり続けています。従来の防災学習では、紙地図やワークシートに危険と思われる場所を記入して情報を整理する授業が見られました。しかし近年では、タブレット端末とGIS(Geographic Information System 地図情報システム)を連携させて効率的に情報を収集し、児童生徒の防災意識、万が一の事態に遭遇した時の判断力を養おうとする学びが増えています。
本記事で取り上げる株式会社エイムは、システム設計・開発などによるソリューションを提案する企業であり、GISを活用した3Dデジタルハザードマップの開発、普及にも注力しています。2024年10月、同社は、神奈川県川崎市にあった東京支店を、東京都大田区のHANEDA×PiOに移転して「東京本社」とし、創業地である山口県宇部市の本社と並ぶ「二本社制」にシフト。地元の大田区をはじめとして、3Dデジタルハザードマップの本格的な全国展開に乗り出しています。同社取締役社長の池田一樹氏に、事業概要やデジタルハザードマップの取り組み、HANEDA×PiO立地のメリットなどを伺いました。

株式会社エイム 取締役社長 池田一樹氏
「当社の創業は2002年。強みとしているのが、マイグレーション技術、AI(人工知能)技術、GIS技術や、紙媒体を使った業務をデジタル化するなどの特化技術です。これらを活用してお客様の業務の効率化、最適化をサポートすることで、企業のDX(デジタルトランスフォーメーション)推進を支援しています」
クライアントは大きく自治体・民間企業の二つに分かれるとのこと。
「双方の業界特有の業務に特化した技術、サービスを提供しています。まず自治体は、政令指定都市である川崎市、さいたま市、福岡市、北九州市の4市を含む多くの自治体に、児童手当、医療費助成、生活保護などの制度に対応したパッケージシステムの導入から運用、保守、さらに固定資産税など地方税に関するシステムも手掛けています。次に民間企業は、鉄鋼メーカーの生産管理や業務プロセスの最適化を支援。加えて、物流、医薬品メーカー、医療機関の電子カルテなどの分野にも携わっています」
加えて、近年注目されている事業が、GISを用いたソリューションの提供です。
「当社の創業地である山口県宇部市の、洪水、高潮などの複数の種類の被害想定を地図上に重ねて表示できる『3Dデジタルハザードマップ』を開発し、2023年より公開致しました。このマップは、一般社団法人やまぐちGISひろば、特定非営利活動法人防災ネットワークうべ、宇部市との協働によって完成したものです。地域や学校の防災学習に活用いただき、市民の防災意識の向上に寄与していると好評をいただいております」

宇部市デジタルハザードマップのトップ画面。洪水、内水、ため池、土砂災害、高潮、津波、ゆれやすさの計7つの指標を重ねることができる
エイムでは、山口本社で開発した「3Dデジタルハザードマップ」、および、その技術を活用し、主に小学校の生徒の防犯・防災意識を高める学びで活用する「デジタル安全マップ」の全国展開を予定しています。その拠点となるのが、2024年10月に移転した東京都大田区のHANEDA×PiOです。
「移転前は、当社のお客様である川崎市役所至近のオフィスを『東京支店』としていました。ただ、以前から首都圏全域の大手企業との取引を拡大するため、都内の拠点設置を検討していたこと、併せて、秋田から鹿児島まで広域にわたるクライアントへのアクセス利便性をさらに引き上げたいとの考えもありました。それらを踏まえて候補地を探し、羽田空港至近のHANEDA×PiOへの入居を決めたのです」
エイムはHANEDA×PiO入居後、大田区の公立小学校の学習に貢献するため、区教育委員会にデジタル安全マップの活用を提案。大田区が行っている総合学習「おおたの未来づくり」の一環で、区内の小学校と企業をマッチングする取り組みへの参加が決まり、2025年6月から区内の公立小学校と連携した学習支援を行っているそうです。
「デジタル安全マップの技術を活用した、オリジナルの地図作りを行ってもらっています。子どもたちが通学する学校付近の30年前の地図と現在の地図を比較、作成するもので、防犯・防災だけでなく、地域の歴史学習にもつなげる狙いがあります」
この学習は好評を博しているとのこと。区内の他の小中学校からの問い合わせが寄せられることに期待できそうです。
エイムがHANEDA×PiOに東京本社を設立して約1年(取材:2025年9月)。ここまでに得られた効果を聞きました。
「以前は山口本社と、川崎市の東京支店でしたが、『山口本社』と羽田の『東京本社』の二本社制に移行でき、対外的な印象を高めることができました。これまで当社では、主に山口県の地元の大学や高専と連携しながら毎年新規採用を行ってきましたが、東京に本社機能を持つことで、首都圏においても優秀な人材の採用戦略が立てられると考えています」
大田区・HANEDA×PiO移転によるメリットは、他にもたくさんあります、と池田氏。
「まず、日本屈指のものづくり企業集積地である大田区の製造業者やスタートアップ企業とコミュニケーションをする機会が増え、多様な取り組みや構想を知る機会を得られたことは大きな刺激になっています。次にPiOPARKの展示会に参加し、私達の取組を発信したり、来場した他企業様との人脈を広げたりできるのも魅力的な長所です。2024年の入居直後には『PiOPARK X』という、入居企業などが創造する、未来を体験できる年1回の大きなイベントが開催され、私達も大田区版のデジタル安全マップの試作品、メタバースなど体験型展示を行うことができました。自社だけでは難しい規模のイベントも、HANEDA×PiOを運営する大田区まちづくり公社のサポートで比較的容易に実施でき、非常に有意義な収穫を得ることができました。他にも、月1回程度の入居企業同士が交流できる茶話会や、企業同士がお互いにオフィスを訪問し合うテナントツアー、ランチ会などもあり、これらも貴重な情報収集の場となっています」
情報発信、ネットワークの拡大といったソフト面に加え、ハード面やロケーションにも満足しています、とのこと。
「現在入居している区画・K110は約178㎡で、天井高約4m。内装は自由に設計できるスケルトンの状態で契約し、応接室、会議室、開発フロアに分けてレイアウトしました。エンジニアからは開放的で快適、仕事に集中できると好評です。また、両本社間のアクセスも改善されました。山口本社は、羽田空港と片道約80分で結ばれている山口宇部空港から車で約7分の場所。東京本社~山口本社間は約2時間半で移動できるようになり、精神的な距離感も縮まりました。もちろん、私達が全国のお客様の会社にお訪ねする時、逆にお客様に東京本社にお越しいただく際も非常に便利です」
2025年7月、エイムは、国際航業株式会社、ESRIジャパン株式会社との3社で、GISに特化したビジネスを行う合弁会社「株式会社SpatialTech」を設立。同社のビジネスは全国のインフラが対象であり、羽田空港至近の立地は利便性が高いとの判断から、所在地はエイムが入居しているHANEDA×PiOのK110としています。
「『GISで課題を解決し、持続可能な未来を創造する』というSpatialTechの思想が、HANEDA×PiOのコンセプトと合致していることも、ここを所在地とした理由です。エイムはもちろん、SpatialTechも着実に事業を拡大し、地元大田区~全国の地域課題を解消するソリューションを提供していきたいと考えています」

「PiOPARK X 2024」に出展。親子連れなどでにぎわった(画像提供:エイム)

2025年7月、大田まちづくり公社主催で「HANEDA×PiOテナントツアー&暑気払い交流会」が開催された(画像提供:エイム)

HANEDA×PiO 区画:K110のエントランスには、エイムとSpatialTechの社名プレートが並んで掲げられている
会社名:株式会社エイム
所在地:【東京本社】東京都大田区羽田空港一丁目1番4号 羽田イノベーションシティ ZONE K110
【山口本社】山口県宇部市西岐波区宇部臨空頭脳パーク1番
代表者:取締役社長 池田一樹
設立: 2002年(平成14年)11月1日
事業内容:コンピュータシステムの設計、導入及び指導業務
コンピュータソフトウエアの開発、販売及び保守
コンピュータシステムの運営及び管理の受託
コンピュータ機器の開発、販売及び保守
労働者派遣事業法に基づく人材の派遣
ホームページ: https://www.aim-it.jp/
東京都企業立地相談センター
ホームページ:https://www.ilsc.metro.tokyo.lg.jp/
■東京都企業立地相談センターとは
企業や個人事業者様を対象に創業や事業拡大する「場所」探しのご相談を不動産専門アドバイザーが無料で承っております。ご希望条件をお伺いし、事務所、店舗、工場、事業用地などを取り扱う民間不動産事業者に一斉照会いたします。
その他、都や都内区市町村の公的物件情報や支援制度もご案内しております。
(東京都企業立地相談センターは東京都産業労働局が運営しております。)
■記事掲載
東京都内に立地し活躍されている企業様や区市町村の企業支援担当者へのインタビュー記事を東京都企業立地相談センターホームページに掲載しております。
ページURL:https://www.ilsc.metro.tokyo.lg.jp/voice/061.html
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